86. 李忠(りちゅう)街頭で薬を売り、棒術を見せて糊口を凌いだ流浪の武人。席次八十六位、地僻星を司る。異名は打虎将。かつて史進に武芸を授けた最初の師でありながら、再会した弟子に腕前を追い抜かれ、魯智深にはその吝嗇さを笑われるなど、常に真の強者たちの影に甘んじる立場にあった。梁山泊では歩兵軍将校として黙々と前線を支え続けたが、方臘討伐のc嶺関攻めにおいて、かつての弟子と共に矢の雨を浴びて絶命。「虎を打つ」という虚名は、最期まで戦場の現実に打ち勝つことはなかった。87. 周通(しゅうつう)桃花山に拠り、覇王の名を借りて虚勢を張った小悪党。席次八十七位、地空星を司る。異名は小覇王。女を掠めようとして魯智深に打ち据えられるなど、その器は称号には程遠かったが、李忠と共に義に導かれ梁山泊の馬軍小彪将の一角を担った。身の丈に合わぬ猛者たちと肩を並べ、戦場を駆け抜けた日々も、独松関の戦いにて敵将・雌V潤の奇襲を受け、一撃の下に打ち砕かれる。覇道を夢見た男の末路は、真の強者の刃によって残酷に断ち切られた。88. 湯隆(とうりゅう)全身に豹の紋様を刻んだ、孤独な鍛冶の名匠。席次八十八位、地孤星を司る。異名は金銭豹子。博打に溺れ身を持ち崩しながらも、鉄を打つ技術だけは魂に宿し続けていた。連環馬に追い詰められた梁山泊を救うべく、従兄の徐寧を罠に嵌めてまで「鉤鎌槍」を造り上げ、逆転の勝利を組織にもたらした。その功績は軍の壊滅を救うほど巨大であったが、本人は常に裏方に徹し、武器を鍛え続けることでしか己を証明できなかった。方臘の乱の激戦で受けた傷がもとで、自ら鍛えた鉄の冷たさとは対照的な、熱き職人の生涯を閉じた。器用貧乏と揶揄されながらも弟子の最期に殉じた李忠、身の丈に合わぬ名に縋りながらも一丁前の武人として散った周通。そして、家族を犠牲にしてまで組織の矛を研ぎ澄ませ、技術に命を捧げた湯隆。最下層に近い席次でありながら、豪傑たちの陰で泥を啜り、それぞれの「義」を貫いた男たちの生き様は、梁山泊という巨大な夢の跡に漂う、ひときわ切ない残り香と言えるでしょう。